私は強くない

「会社がお前を潰そうとしたのを、守ったのが名取なんだよ…」

都築課長から、初めて聞かされた私の3年前の人事異動の真相。

都築課長は、説明してくれた。

AGが女性社員に対してあまり期待してないってこと、結婚退職するのが分かってて、役職につけてどうするのか、しかも営業部で、って。

だから、3年前私は主任だった私を飛び越えて樫原さんが係長になったのか。
でも、主任でよかったのに、営業の仕事が続けられるんだったら…

「倉橋、そのまま営業でもよかった、って今の話を聞いて思っただろう？」

私の心内を分かってか、都築課長が聞いてきた。

「…はい、あのままでも…」

よかった。そう言おうとした。

「よくないんだよ…それがな…」

笑撃だった。
そこまで、圭輔さんが私の事考えていてくれたなんて…

本当だったら、あのまま主任を降格されて、拓真より下に追いやられてただのんて、専務の意向で、佐野主任のフォローに回されて、いいとこ取りをされてたかもしれないなんて…

「名取がな、必死で止めたかったんだよ。だから、俺が人事部にくれって言ったんだ」

「え？都築課長が？」

「あぁ、まだ人事部の方が倉橋が働きやすいだろう、ってな。だいぶ悩んでたんだぞ？名取のやつ。人事部に行かせる事は反対だけど、このまま営業部にいても、悔しい思いをするのは倉橋だって。俺はその時、確信したんだけどな、あいつはそれに気がついてなかったんじゃないか、多分な」

あぁ、前に私の家で話してたのって、これだったんだ。
そうだ、この事だったんだ。

「まぁ、最近になって、やっと自覚したんじゃないかな、違うか？普通はな、ただの部下にそこまでしないって」

顔が上げられない。
恥ずかしい。
都築課長にまでバレてるなんて……

「ついでに言ってやろうか？】

「え？」

「名取な、倉橋に彼氏出来たって聞いたその日、やけ酒したんだよ。俺が付き合わされた。あいつは、倉橋の事じゃない！仕事で腹が立つ事があったんだ！って言ってたけどな。その倉橋が営業部に戻りたい！って聞いて…想像つくだろ？」

全てお見通し、って感じで微笑まれた。
恥ずかしいです、都築課長。


「ま、そういう事だ。だから、俺も頑張らせてもらったよ。同期の為にな」

「ありがとうございます」

「結婚式はちゃんと、呼べよ？」

「…はい…え？な、な」

「ハハッ。まだ先か？多分俺は早いと思って流ぞ？」

「もう！都築課長！」