私は強くない
第一会議室で、東和堂の長浜課長から、プレゼンの結果発表が行われた。

悔いはない。
これは、本音。
営業部で、もう一回仕事がしたい、これも本音。だけど今回の結果でダメだったとしても、それはそれで、仕方のないこと。現実を受け止める、そう思っていた。



「これより、東和堂、長浜から結果を発表させていただきます。今回は急な依頼にも関わらず、こんな素晴らしい案を出していただいた事に感謝しております。
まず、結果として伝えさせていただきたいのは、今回のコンセプトにある『変わらない想い』を忠実に守りながら、違った見方が出来るように、取り組んでいただいた…」


この緊張感は久しぶりのものだった。長浜課長が話すればするほど、増してくる緊張と戦いながら、話を聞いていた。


「今回は倉橋慶都さんから、出していただいた案でいきたいと思います」


え?
私の案?

「…わた、私ですか?」

「何驚いてるんだね?倉橋君、君の案だよ。奥菜君のも、もちろんよかったけどね。甲乙をつけにくかったよ、今回は。ただ、コンセプトを忠実だったのは倉橋君の案でね。下永も中井も君の案でいきたいと言ってるよ」

「ありがとうございます。ありがとうございます、頑張ります」

嬉しくて涙が頬を伝っていた。
続けて、長浜課長から提案があった。

「今回の奥菜君のもよかったんでね、違う案件があるんだが、そこを頼みたいんだがいいかな?」

これには、聞いていた圭輔さんや拓真も驚いていた。
常務と専務は2つも仕事が、それも東和堂からと言う事もあり、おぉ!と私達に賛辞を送ってくれた。


「倉橋係長、今回は自分の傲慢が表に出た結果だと思ってます。完敗です」


拓真が頭を下げに来た。

「出来る事をしたまで、次も負ける気はないわ。ありがとうございました」

私も頭を下げた。
今までありがとう、と。

でも、あなたはこんな所で私に頭を下げてる場合じゃないでしょ。

仕事は出来ても、人として最低なあなた。

これから別の戦いの始まりよ。
< 75 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop