私は強くない
「ばか、声が大きいって!」

「あ、ごめんなさい。だって、びっくりするじゃないですか」

香里に至っては、もう真っ赤。
見てられないぐらいに、顔を下に向いている。

「初めてがどうだ、って言うんだ」

「あ、いや、名取課長、それは…」

圭輔さんと金谷君が、ゴソゴソと話をし出した。2人とも、それはなんだ、どうしたと言い合ってたので、聞いてみた。

「圭輔さん。男の人って、女の人はやっぱり初めての方がいいんですか?」

「!!!な、何を言ってるんだよ、慶都。んな訳ないだろ」

「一般的な意見聞きたいんです。金谷君は?どう?」

「あ、私も聞きたい。陽一、どうなの?」

「!!え?俺?参ったな…」

二人とも話が振られるとは、思ってなかったみたいで、慌ててた。

俺は違うぞ!って言いながら、世間一般的な意見を圭輔さんが話をしてくれた。

『男は初めての男になりたい』

願望があるらしい。
金谷君も一緒になって、頷いている。

圭輔さんは、話をしていて私が何を言おうとしてた事に気がついたらしい。

「もしかして、奥菜の奴。初めてだから、なのか?」

私は黙って頷いた。

「私も初めは、彼女が騙したんだって思ってたんです。人がいいって言われるかもしれないけど、話を聞けば聞くほど、彼女が嘘言ってるようには見えなかった。私が拓真とは別れるって言ってるのに、私に助けてほしいって言いに来た事も…」

「…最低」

「美波…」

「だってそうじゃない。生でヤりたいからって、言葉巧みに騙して避妊もせずに、ヤッたあげくに、妊娠したかも?に結婚するって言ったけど、妊娠してなかったからって、騙されたって言って、相手のせいにして別れようとしてるんでしょ!」

「美波、声でかいし、生々しすぎる」

慌てた金谷君が止めに入った。

「あいつ、最低だな。ここまでひどいなんてな」

「私も最低だと、思った。けど、浜口さんは違うのよね?」

「え?」

3人が驚いて、香里を見た。

「それでも、好きなんだって、拓真の事」

「信じられない…」

美波と金谷君はため息を吐きながら、香里を見た。
圭輔さんに至っては、呆れて物が言えなくなってた。


「…やっぱり、バカですよね。私…すみませんでしたっ…」

いたたまれなくなった香里が帰ろうとした、私が止めるまでに美波が引き止めていた。




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