私は強くない
「あ、携帯。誰だろ?」

お店に入った時、美波が自分の携帯に着信ランプが光っているのに気がつき、歩きながらチェックしていた。

私は都築課長と並んで、座敷に行こうとしていた。


「!!あ、慶、慶都さん!!ちょっと、待っ…」

「ん?」

「こちらの座敷でございます」

「あ、ありがとう………!!!」

嘘。

お店の人に、連れて行かれたと同時に美波が、 私を呼び止めた。LINEを見て慌てた様子が見てとれたが、私を呼び止めるまでに、間に合わなかった。
座敷に案内されて、私は驚いた。

「…な、なん、なんでっ…」

「お、お疲れ!奇遇だな。こんな所で」

「お疲れ様です…」

驚いているのは、私だけじゃない一緒に行った人事部のは面々も同じ。

だって、そこにいたのは…

「お疲れ様です、柏木部長。珍しいですね、こんなに所で飲んでるなんて」

「お、都築か。人事部も飲み会か、部長である俺を誘ってくれないと」

「いやぁ、今日は出先からそのまま直帰かと」

「直帰のつもりだったんだかな、ちょっとな」

人事部の部長である柏木部長が、そこにいた。
都築課長は、当たり前だが普通に聞いて、そうですか、と言ってる。

予定外のメンバーに私も美波も、さすがに戸惑った。

しかも、そこに…

「な、なんで、陽一がここにいるのよ!」

そう。
金谷君までもが、同じテーブルで飲んでいたのだ。予定では、後から合流するはずなのに…


「…ど、どうも」

明らか、挙動不審になってる金谷君、私も美波もありえない状況に頭がついていかないでいた。なんでこうなってるの?圭輔さん!
圭輔さんを見ると、ヤバイって顔してる。なんだか、計画がおかしい方向へ…

私の動揺をよそに、都築課長が話しかけた。

「金谷、そちらの女性はどなたかな?確か、お前の相手って、木村じゃなかったのか?」

金谷君の横にいた女性が頭を遠慮がちに下げた。

そう。

柏木部長と金谷君の間に、香里が座っていた。
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