私は強くない
私や美波が聞こうと思っていた事を、橋本君がさらっと聞いていた。

聞いちゃう?それ今聞く?

「あぁ。出先から、直帰しようとしたら、香里が男と揉めてるのを見かけたんでな、叔父として放っておけないだろ?泣いてるし、気になって声をかけたんだよ」

「男って、よう、金谷ですか?お前、木村がいるのに二股とか、何やってるんだよ!」

橋本君が、金谷君のを胸ぐらを掴もうとした、

「…ちが、違うって!俺じゃねーよ!」

うん。
私達は知ってる。知ってるけど、皆んな知らないからね…

金谷君は、橋本君の腕を振りほどき、柏木部長に助けを求めた。

「…柏木課長、あ、部長。お願いしますよ」

「おぉ、そうだな。俺も金谷が彼氏だと思ったんだがな、香里に違う!って怒られたんだよ。で、話を聞いたら、相手が別だって分かって、叔父として、もう少し話がしたくてな、飲みに誘って、この店に入ったら、名取達が飲んでたんだよ。だから、男の意見を聞くにはちょうどいいか!ってなって一緒に飲んでるって訳だ」

「…なんだ、違うのか。安心したよ。お前もか、って思ってカッとなった。悪い」

お前もか…

ナイス!橋本君!

この言葉を私と美波は、聞き逃さなかった。

「ねぇ?橋本。お前もかって、他にもいる訳?」

私が聞く前に美波が突っ込む。

「いや、それは…」

「橋本君、私も気になるな。そんな二股する人なんているの?周りに…」

「…え、いや…」

巻き込まれた他の面々も、興味深々で話を聞いていた。

二股する男なんて、やめた方がいいとか、まぁ、いろいろと、皆んなで飲みながら話をしていた。

圭輔さんと都築課長もいつの間にか、一緒になって飲んでるし。

橋本君が、名前を出せずにいると、金谷君が計画を続行し始めた。

「彼女、浜口さんって言うんですけどね、俺の友達の事が好きらしくて、その友達には彼女がいるからどうしたらいいですか?って。浮気相手を卒業したい、本命になりたいから、って相談受けたんですよ」

香里は、恥ずかしさのあまり顔を上げれなくなっていた。
その横で、柏木課長が怒り始めた。

「そ、それは、ほんとかっ!金谷!」

「えぇ、事実です。ダチには、二股なんてするな!って言いましたけどね。聞く耳持たないんですよ」

二つのテーブルで、ひどい、ありえない、男としてクズだ、って散々なんて言われよう。

聞いてる?拓真。
あんたの事だよ。

そして、拓真は、もう完全に表情がなくなっていた。

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