私は強くない
「なに?いるのか?」

「いや、もしもの想定で聞いてるんですよ。そんな男が社内にいたらどうですか?」

都築が言った言葉に、柏木が考え込んだ。

「そうだなぁ。個人的な事を仕事を持ち込みたくはないんだがな…、姪の事だろ?俺にとっては娘みたいなもんだならな、会社にはいられなくしてやるな。辞めても、同じ業界でいられなくしてやるよ」

「え?柏木部長、それ本気ですか?」

柏木の発言に美波が反応した。

「当たり前だろう。男と女がくっついて別れるのは、普通だと俺は思う。木村もそうだろ?何かし原因があって別れたりするもんだ、それをだな、自分勝手な浮気心で二股なんてする奴は、人としてする事じゃないだろ。別の女と付き合いたいなら、前の女とは切れるべきだと俺は思うが、違うか?」

黙って聞いていた、皆が頷く。

「確かにそうですね、柏木部長が言う事が正しいですよ」

都築も賛同した。

「1回やった奴は、またやる。俺はそう思う。信用なんて出来ない。まぁ、これは男でも女でも同じだと思うがな」

「あ、それ分かります。私、女ですけど、女も浮気しますからね。私は違いますけどっ」

「…で、奥菜どうなんだ?浮気したことがあるのか?」

「え?あ、言わなきゃいけませんか?」

「まぁな、プライベートな事だが、仕事にも影響するんだぞ、分かってるのか?お前は営業部なんだぞ?会社の顔になるんだぞ?」

都築が拓真に畳み掛けた。
拓真は、どうしても答えなきゃいけないのか、と返事をかわそうとする。

「………っ」


拓真は、目を瞑った。
もうダメだ。
逃げる事は出来ない。
そう、思った。




私は、横のテーブルでハラハラしながら、一部始終を聞いていた。圭輔さんも同じ。

「あいつ、やり過ぎだぞ。いくらなんでもあそこまでは、聞きすぎだろ」

「私も思います。圭輔さん、どうします?私出てもいいですか?」

さすがに、これ以上、都築課長に迷惑はかけられない。

「…行くか?俺も行こうか?」

「いいえ、これは私と拓真の問題。社内で大事になったら、そん時助けて下さいね」

私の顔を見た、圭輔さんが大丈夫と思ったのか、行ってこい、って言ってくれた。

私は今いたテーブルから離れて、横に移った。
その後、元いたテーブルでは圭輔さんが話し始めていた。




「…いいですか?私も加わっても?」

ごめんね、拓真。
私が泣いた分、同じように泣かせてあげるから。

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