私は強くない
ビールを持って私もそこに参加した。

都築課長は大丈夫か?と耳打ちしてくれた。
大丈夫です、私から話します。と言って拓真に向き直った。

「すみません。皆さん。隠してて申し訳なかったんですけど、私…」

「ちょ、待っ…」

「拓真は黙ってて!」

「っ…」

バラされたら困ると思った拓真は、私を制止しようとしたけど、一言で黙らせた。
それをびっくりして見ていた、柏木部長と橋本君。

「どうした?倉橋君」

「柏木部長、個人的な事で申し訳ありません。でも、皆んなの見てる前でケジメつけたいんで、話続けていいですか?」

「ん?あぁ、かまわんよ」

柏木部長はいいよ、と言ってくれた。
もう一度、拓真に向き直った。

「私、ここにいる奥菜拓真さんと、3年付き合っていたんです」

驚いたのは、柏木部長と橋本君。
そりゃそうよね。
そして、完全動きが止まって、フリーズしている拓真。

少し黙っていると、橋本君が大きな声を出した。

「あぁ!!倉橋係長だったんですか!拓真の彼女って!じゃあ、あの子の事も…」

「えぇ、知ってるわよ。それで私は振られましたから。次の女に子供が出来たから別れてくれ、って。完全二股かけられてた、オメデタイ女って事でしょ」

柏木部長の顔が、険しくなっているのが分かった。
これは完全に怒ってる。
ここで、香里の話は出来ない。あくまで、香里の話は別物で話しないと。
私は頭の中で、言葉を組み立てた。

「拓真、お前最低だな。まさか相手が倉橋係長だったなんて。なんでそんな事が出来るんだよ!」

「奥菜、あんたホントひどいよね。あれどけ慶都さんにしてもらってたのに、傷つけるだけ傷つけて」

美波や橋本君が拓真を責め立てた。
何も言えない、拓真…
言えなくしてやる。

「おまけに、相手の妊娠が勘違いだからヨリ戻そう?バカにするのもいい加減にして!お前の相手は俺しか残ってないみたいなことまで言って、私の事どこまでバカにしたら気が済むの?私、あんたの事裏切られても好きだなんて言った事あった?それに何?強い?私が強い?一人で生きていける?ふざけんなよっ!お前何様のつもりなの。どんだけ自分がモテる、いいオトコだって勘違いしてんの?頭悪いんじゃない?私が避妊しなきゃ絶対ヤラセないからって、…浮気相手の事も騙してヤッたよね?それで妊娠騒動?妊娠してないから、私とヨリ戻そうなんて、人間として、サイテーッよね!本当なら今すぐ、私の前から姿消して欲しいぐらいなんだけど!それじゃ、私の気が済まないのよ!!」

一気にまくしたてた。
拓真、撃沈。

あ、言い過ぎた…

やってしまった…。



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