――桐島くん。
正直、私はSNSなどは信用していなくて、ツイッターもインスタもやってないから、桐島くんのように無闇に誰とでも仲良くする人の感覚は分からない。
だけど、その人懐っこい性格と顔の広さで学校外でも桐島くんはよく声をかけられていた。
なんだかガラの悪い人たちとも知り合いだったみたいだし、家に帰らずに色んな人の家を泊まり歩いたり、夜の街で遊んでる姿もたびたび目撃されている。
ある人はヤバい人に好かれてしまい連れ拐われたんじゃないかとか。ある人はそういうゲームをしてるだけなんじゃないかと言う人もいる。
もうすぐ中間テストの時期だというのに、話題はどこも桐島くんのことばかり。
それだけ彼が目立つ存在だったということなのだろう。
「桐島くんが悪いことに巻き込まれてたらどうしよう。もしなにかあったら私……っ」
再び、涙を流しながらハンカチで口元を押さえるアヤの肩を私は優しく抱き寄せた。