――桐島くん。


「ねえ、アヤのことどう思う?」

その日の帰り道。自宅の方角が一緒なので私はチエミと肩を並べて歩いていた。


「どうって?」

地面に映っているふたつのシルエット。スラリと背が高いチエミの影は私より大きい。


「うーん。実は私、アヤのことけっこう苦手なんだよね」

私はその言葉に驚かなかった。なんとなくそうかなと思うことは今まで何回もあったから。


チエミはどちらかと言えばボーイッシュで、性格もさっぱりしている。

だからアヤのように身の回りの物はブランド品じゃなきゃ嫌。人と被るのも嫌。自分が一番じゃなきゃ許せないというお姫様気質とは根本的に合わないのだと思う。


「それにさ、桐島くんのことについてもなんか鼻につくっていうか……」

「?」

「ほら、付き合ってることうちらにも内緒にしてたじゃん」


アヤの話では、桐島くんと付き合って今月で1か月になるそうだ。まだ日が浅いように感じるけれど、アヤがずっと桐島くんを狙っていたことはみんなが知っている。

自分の可愛さを武器にして、ボディタッチや上目遣いは当たり前。

口を開けば桐島くんの話ばかりで、私も含めてグループのみんながアヤの恋愛相談に乗っていた。


なのに、アヤは私たちになんの報告もしないで桐島くんと付き合い、その事実を聞かされたのは桐島くんが行方不明になった後のことだった。

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