――桐島くん。
「桐島くんがこんなことになってから実は付き合ってたとか言われても冷めるっていうか……。普通にありえないなって、アヤが泣いてても慰める気にならないんだよね」
たしかにアヤは散々、みんなのことを振り回していた。
桐島くんのことを考えると眠れないって、夜中に電話してきたり。用事があるって言ってるのに桐島くんとわざと鉢合わせになりたいから尾行するの付き合ってと都合を押し付けてきたり。
あまり邪険にすると可哀想だから言わなかっただけで、みんなそういうアヤの自己中な部分に困っていたことは事実。
「それに絶対、今回の桐島くんのことがなかったらアヤは今でもうちらに内緒にしてたと思うし。そう考えると都合よく使われてる気がしてムカつくんだよね」
チエミはそう言って親指の爪を噛んだ。
これはチエミの情緒が乱れる時にする癖。苛立ったり、困ったり、嘘をつくと必ずする行動をチエミ自身が気づいているかは分からない。
「ごめんね。アヤに対する愚痴とか聞かされても困るよね」
申し訳なさそうに眉を下げるチエミに、私は首を横に振った。
「でも私、メイコのことは本当に友達だと思ってる。こんなこと話せるのはメイコしかいないから」
「……チエミ」
「だからメイコもなんでも話してね」
チエミの笑顔に応えるようにして、私は「うん!」と弾んだ声を返した。