家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
*
一行は場所を切り株亭に移す。
ケネスは黒服の男たちが一緒に戻ってきたのを見ると、目を見開いて「おやおや」とつぶやいたが、ザックの目配せを受け、緩やかにほほ笑む。
「ご苦労だったね。君たちは元の配置に戻っていいよ」
「はい」
一斉に頭を下げる黒服たちを見て、「伯爵家の護衛か」とレイモンドが納得したようにつぶやいた。
それに納得していないのは、彼らがザックを『殿下』と呼んだことに気づいていたロザリーだけだ。
料理人が不在だったのだから当たり前なのだが、現在食堂は閑散としていた。ニールはみんなに取り囲まれ、すっかり観念した様子で頭をさげる。
「オードリーが帰ってきてるっていうからさ」
オードリー、ランディ、ニール、レイモンドはみな同年代で、年齢はその順番で一歳ずつ下る。
同時に学校に通う時期があるので、仲の良し悪しはあれど、全員が顔見知りではあった。
オードリーが一番の才媛で、グラマースクールに進学したことも、レイモンドがオードリーに片思いしていたのも既知の事実だ。
加えてニールは、十七年前の指輪事件についても知っている。当時十二歳の子供だったが、指輪に金庫の鍵が隠されていて、それを目当てにオリバーが盗んだという噂は街中を駆け巡ったからだ。
一行は場所を切り株亭に移す。
ケネスは黒服の男たちが一緒に戻ってきたのを見ると、目を見開いて「おやおや」とつぶやいたが、ザックの目配せを受け、緩やかにほほ笑む。
「ご苦労だったね。君たちは元の配置に戻っていいよ」
「はい」
一斉に頭を下げる黒服たちを見て、「伯爵家の護衛か」とレイモンドが納得したようにつぶやいた。
それに納得していないのは、彼らがザックを『殿下』と呼んだことに気づいていたロザリーだけだ。
料理人が不在だったのだから当たり前なのだが、現在食堂は閑散としていた。ニールはみんなに取り囲まれ、すっかり観念した様子で頭をさげる。
「オードリーが帰ってきてるっていうからさ」
オードリー、ランディ、ニール、レイモンドはみな同年代で、年齢はその順番で一歳ずつ下る。
同時に学校に通う時期があるので、仲の良し悪しはあれど、全員が顔見知りではあった。
オードリーが一番の才媛で、グラマースクールに進学したことも、レイモンドがオードリーに片思いしていたのも既知の事実だ。
加えてニールは、十七年前の指輪事件についても知っている。当時十二歳の子供だったが、指輪に金庫の鍵が隠されていて、それを目当てにオリバーが盗んだという噂は街中を駆け巡ったからだ。