家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました



それから一週間後、外の掃除をしていたロザリーのもとにザックがやって来た。

「こんにちは、ザック様」

「ロザリー、今晩暇か?」

「大丈夫ですよ。どうかしました?」

「会わせたい人がいるんだ。また夜に迎えに来る」

「はあ」

そのままそそくさと帰ってしまう。今日は食べていかないのかと不思議に思いながら見送っていると、「見てたわよー」といつの間にか背後にチェルシーが忍び寄っていて、ロザリーは飛び上がるほど驚いた。

「チェルシーさん!」

「なんかいい雰囲気だったじゃない? 前からちょっと怪しいなぁって思ってたのよね。もしかして……ザック様といい感じ?」

「いい感じ……とは?」

ロザリーの頭にははてなマークがいっぱいだ。

「やあね、ふたりは好き合ってるの? ってことよ」

「え? いえいえいえ、まさか。そんな滅相もない。……ザック様は伯爵家の方ですよっ。そんな身分違いな……」

「そりゃ結婚ともなれば身分違いとかあるけど、ロザリーまだ十六歳でしょ? いいじゃない。恋愛するだけなら」

「はあ、そういうものなんですか?」

「そうよ。私みたいに一人に固執して青春時代を無駄にしたらもったいないわ。この年になって上手な恋愛の仕方もわからないなんて、目も当てられないわよ」
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