家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました

自戒の念をこめて言われれば反論もできない。たしかにチェルシーのまっすぐな七年愛は格好いいと思えるものだが、それが報われるのは実ったときの話だ。チェルシーがそう思う気持ちもわかる。

ザックが好きだと自覚したことで、ロザリーは過度な期待をしないようにと思いこんでいた。
ザックとは年齢も立場も離れているし、恋愛的な意味で好かれることなどあるはずがない。
以前伯爵邸でザックからもらった言葉も、リルの記憶にあるような、かわいいものに向けられる単純な愛情なんだと思うことにしていた。

「そんな風には思われていないでしょうけど、私はザック様と一緒にいるの楽しいです」

「そうよね。青春を謳歌しなきゃダメよ。私も新しい恋を見つけるわ。できればオードリーさんが来る前に」

意気込むチェルシーの様子はから元気にも思えるが、泣かれているよりはずっと安心だ。ロザリーはホッとした面持ちで彼女を見つめる。
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