家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
*
その夜、事件はザックとの待ち合わせ時間の前に起こった。
夕食時の切り株亭は食堂が忙しい。チェルシーが注文を聞き、レイモンドが料理を作り、ランディがそのサポートをする。ロザリーも次々と出る汚れたお皿を洗っていた。そのタイミングだ。
ふいに、懐かしい匂いが鼻をかすめた。
(加齢臭……でも近所のおじさんのとは違いますね。これは……なんか懐かしいような)
思いいたって、顔をあげると、切り株亭の戸口に険しい表情で祖父であるエイブラム=ルイスが立っていた。
「いらっしゃいませ。おひとりですか?」
何も知らず、話しかけに行くのはチェルシーだ。ロザリーは思わず隠れてしまう。
(どうして! たしかに、いつか行こうとザック様とは言っていたけど、まさかおじい様のほうが来るなんてビックリですけど!)
エイブラムはきょろきょろと辺りを見回している。チェルシーが「誰かお探しですか?」と気を利かせる。
(いやいや、待って、チェルシーさん。私、心の準備がまだですー!)
急にしゃがみこんだロザリーを、厨房内にいるレイモンドやランディが不審そうに見ている。
慌てふためいていると、よく知る声が聞こえてきた。
「ここにいたんですか! ルイス卿」
「ザック殿」
「連れてくるからお待ちくださいと言ったでしょう」
一瞬、食堂内がざわめく。
更に後から追いかけてきたケネスが、ゆったりした口調でつぶやく。
その夜、事件はザックとの待ち合わせ時間の前に起こった。
夕食時の切り株亭は食堂が忙しい。チェルシーが注文を聞き、レイモンドが料理を作り、ランディがそのサポートをする。ロザリーも次々と出る汚れたお皿を洗っていた。そのタイミングだ。
ふいに、懐かしい匂いが鼻をかすめた。
(加齢臭……でも近所のおじさんのとは違いますね。これは……なんか懐かしいような)
思いいたって、顔をあげると、切り株亭の戸口に険しい表情で祖父であるエイブラム=ルイスが立っていた。
「いらっしゃいませ。おひとりですか?」
何も知らず、話しかけに行くのはチェルシーだ。ロザリーは思わず隠れてしまう。
(どうして! たしかに、いつか行こうとザック様とは言っていたけど、まさかおじい様のほうが来るなんてビックリですけど!)
エイブラムはきょろきょろと辺りを見回している。チェルシーが「誰かお探しですか?」と気を利かせる。
(いやいや、待って、チェルシーさん。私、心の準備がまだですー!)
急にしゃがみこんだロザリーを、厨房内にいるレイモンドやランディが不審そうに見ている。
慌てふためいていると、よく知る声が聞こえてきた。
「ここにいたんですか! ルイス卿」
「ザック殿」
「連れてくるからお待ちくださいと言ったでしょう」
一瞬、食堂内がざわめく。
更に後から追いかけてきたケネスが、ゆったりした口調でつぶやく。