家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
「おはよう、ロザリー。飯は食ったか?」
「いえ、寝坊しちゃって」
「なんだ。せっかく伯爵邸の豪勢な食事を食べれるチャンスだっていうのに。だったらお前も食うか。まかない」
「はい!」
正直、料理はレイモンドのが一番おいしいのだ。
直ぐ帰るつもりだったザックまで、「なら俺もご相伴に預かろうかな」などと言い出す。
「ザック様にまかないはさすがに……」
「俺が食いたいって言ってるんだからいいんだよ。なんだ? 働かざる者食うべからずというなら、俺も手伝えばいいか?」
レイモンドは顔をひきつらせたが、ザックはロザリーの隣に腰掛け平然と言ってのけた。
「やめてくださいよ。ケネス様に怒られます。ロザリーを送ってくれた分で帳消しでいいです」
言っている間にもレイモンドの手は止まることはない。
あっという間にできたまかないをいただき、ロザリーとザックは舌鼓を打った。
「……で、昨日のご老人はお前のじいさんだってのは聞いたけど、他にも言うことがあるんじゃないのか?」
レイモンドに促され、ロザリーは途中だった食事を飲み込む。
そして、チェルシーやランディにも向けて頭を下げた。