家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
「すみませんっ。今まで素性を隠していて。……実は私……」
ロザリーは自分が男爵令嬢であることを告げた。
騙していたとなじられるかと思ったが、ロザリーが危惧していたほど、彼らには反応がなかった。何を今さらと呆れた様子だ。
「貴族のお嬢さんだろうとは思っていたぞ? ルイス男爵令嬢だったとは知らなかったが」
「えっ。いつからですか?」
「最初に来たときから。服の仕立てが庶民のそれとは違うからな」
レイモンドの言に驚いているロザリーに追い打ちをかけるようにチェルシーも言う。
「あのどんくささは庶民のものじゃないわよ。私もどこかいいところのお嬢さんなんだろうなって思っていたわ」
「チェルシーさんもですかぁ?」
嫌われるのではないかと心配していたのに、あっさり言われて拍子抜けだ。そこに、ひとりだけ、「えっ、俺は驚いたぞ!」と反応するのはランディだ。
ロザリーはアワアワするランディに親近感を覚える。
「なんだ。私、身分がバレたら解雇されちゃうかと思いました」
「なんでだよ。貴族だろうがなんだろうが、働く気があるんならずっといてくれないと困る。だってさ。……なあ、お客さん、この宿の名前、憶えているか?」
突然レイモンドが客席に向かって声をかけた。ロザリーもそちらを見ると、食後のお茶を楽しんでいる数名の客が、客席にはちらばっていて、みんな一様ににっこり笑いながら答えた。
「失せもの探しの切り株亭、だろ。有名だよ」
「ほらな」
レイモンドがぱちりと片目をつぶる。嬉しさでロザリーの胸がいっぱいになる。尻尾の代わりにふわふわの髪を思い切りよく揺らしながら、「いつもありがとうございます!」と、お辞儀をした。
ロザリーは自分が男爵令嬢であることを告げた。
騙していたとなじられるかと思ったが、ロザリーが危惧していたほど、彼らには反応がなかった。何を今さらと呆れた様子だ。
「貴族のお嬢さんだろうとは思っていたぞ? ルイス男爵令嬢だったとは知らなかったが」
「えっ。いつからですか?」
「最初に来たときから。服の仕立てが庶民のそれとは違うからな」
レイモンドの言に驚いているロザリーに追い打ちをかけるようにチェルシーも言う。
「あのどんくささは庶民のものじゃないわよ。私もどこかいいところのお嬢さんなんだろうなって思っていたわ」
「チェルシーさんもですかぁ?」
嫌われるのではないかと心配していたのに、あっさり言われて拍子抜けだ。そこに、ひとりだけ、「えっ、俺は驚いたぞ!」と反応するのはランディだ。
ロザリーはアワアワするランディに親近感を覚える。
「なんだ。私、身分がバレたら解雇されちゃうかと思いました」
「なんでだよ。貴族だろうがなんだろうが、働く気があるんならずっといてくれないと困る。だってさ。……なあ、お客さん、この宿の名前、憶えているか?」
突然レイモンドが客席に向かって声をかけた。ロザリーもそちらを見ると、食後のお茶を楽しんでいる数名の客が、客席にはちらばっていて、みんな一様ににっこり笑いながら答えた。
「失せもの探しの切り株亭、だろ。有名だよ」
「ほらな」
レイモンドがぱちりと片目をつぶる。嬉しさでロザリーの胸がいっぱいになる。尻尾の代わりにふわふわの髪を思い切りよく揺らしながら、「いつもありがとうございます!」と、お辞儀をした。