家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
「ははは。腹が減っているんじゃないのか。レイモンド。雇う雇わないは置いておいて、彼女に食べ物を。俺が奢ろう。腹が減ってはなにも出来ないしな」
「す、すみません」
ただでさえ真っ赤な顔がますます赤くなる。
「そうだね。食事は人生で最も大切なものだよ。だから私は君を伯爵家に欲しいんだがなぁ」
金髪の青年がレイモンドの肩をたたき、ロザリーの荷物を持ってテーブル席に移動する。
「え、あの」
「こっちにおいでロザリーくん。俺はイートン伯爵の嫡男、ケネスだ。以後、お見知りおきを」
「まあっ、伯爵子息様でしたの?」
「君は? 平民の娘ではなさそうだが。……どこのご令嬢なんだい?」
問いかけられて、ロザリーは何と答えたらいいかわからずうつむく。
ロザリーの父・ルイス男爵は田舎の弱小貴族だが、領地を健全に維持し、資産運用でもってそれなりに裕福な暮らしをしていた。しかし、二ヵ月前の当主の事故死により爵位は隠居していた祖父のエイブラムが再び継承した。
その状況でこうしてロザリーが旅しているのを知られれば、人はエイブラムがロザリーを追い出したと思うだろう。まして、令嬢ロザリンドは病気であるという嘘までついているのだから。
祖父が人から悪く言われるのが嫌で、ロザリーは明言できない。
ロザリーが困り果てて押し黙っていると、黒髪の青年が助け舟を出してくれた。
「す、すみません」
ただでさえ真っ赤な顔がますます赤くなる。
「そうだね。食事は人生で最も大切なものだよ。だから私は君を伯爵家に欲しいんだがなぁ」
金髪の青年がレイモンドの肩をたたき、ロザリーの荷物を持ってテーブル席に移動する。
「え、あの」
「こっちにおいでロザリーくん。俺はイートン伯爵の嫡男、ケネスだ。以後、お見知りおきを」
「まあっ、伯爵子息様でしたの?」
「君は? 平民の娘ではなさそうだが。……どこのご令嬢なんだい?」
問いかけられて、ロザリーは何と答えたらいいかわからずうつむく。
ロザリーの父・ルイス男爵は田舎の弱小貴族だが、領地を健全に維持し、資産運用でもってそれなりに裕福な暮らしをしていた。しかし、二ヵ月前の当主の事故死により爵位は隠居していた祖父のエイブラムが再び継承した。
その状況でこうしてロザリーが旅しているのを知られれば、人はエイブラムがロザリーを追い出したと思うだろう。まして、令嬢ロザリンドは病気であるという嘘までついているのだから。
祖父が人から悪く言われるのが嫌で、ロザリーは明言できない。
ロザリーが困り果てて押し黙っていると、黒髪の青年が助け舟を出してくれた。