家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
「でしたら私、探します。袋を見せてもらってもいいですか?」
「あんたが?」
「ええ、私、探しものは得意なんです」
ロザリーは自身満面に胸をはったが、レイモンドは渋い顔をした。
見ず知らずの人間を宿屋のいざこざに巻き込むわけにはいかないからだ。
「しかし、従業員でもないのに、勝手に宿の中をうろつかせるわけには……」
レイモンドが口ごもっていると、ザックが横から口をはさんだ。
「いいじゃないか。探してもらえば。ロザリーのことが信用ならないというなら、俺が一緒に見て回るよ。イートン伯爵家の親戚筋の俺なら、信用に足るだろ」
「ザック様」
「イートン伯爵家の名にかけて、不正は見逃さないと誓う。……どうだ?」
「それなら……かまいませんけどね」
ザックにこう言われては頷くしかない。なにせイートン伯爵家はこの領土の領主だ。伯爵家の名をかけられて、反抗しようものなら伯爵家そのものへの反抗になってしまう。レイモンドは渋々といった様子だが同意した。
それに、レイモンドはロザリーに対しては不信感はない。働きたいという言葉自体は受け入れがたいが、本人は素直そうだし、悪いことをしそうには思えない。それに……
「なんか、……懐かしい感じがするんだよな」
ふわふわの金髪、丸くくりっとした瞳。たしかに初めて見るお嬢さんなのに、どこか既視感がある。
「瞳の色……かな」
レイモンドはそうつぶやき、「じゃあ、あとはお任せします」とケネスとザックに言い、自分は厨房仕事に戻っていった。