家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
3.初めての失せもの探し
「じゃあ、お手並み拝見と行こうか。ロザリーと呼んでいいかな? 俺のことはザックと呼んでくれ」
「はい。ザックさんよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて、まずは相棒となるザックに挨拶をする。
ザックはとても背が高く、ロザリーは首を思い切り曲げないと目を合わせられない。
艶のある黒髪に、すっと通った鼻筋。切れ長の目の中は輝く緑色の瞳だ。顔形が整っているというだけじゃなくて、気品のようなものが感じられる。隣に立つと気後れしてしまうほどだ。
もちろんケネスも美形なのだが、彼はたれ目と言動の軽さのせいで少しばかり砕けた印象になる。
ちなみに彼は、重労働は自分の仕事じゃないとばかりに、食堂に陣取ったまま蜂蜜酒をおかわりしている。
「自分なら探せるかもしれないと言ったな。それはどうしてだ?」
「……信じてもらえるかわかりませんけど、私、鼻が鋭いんです。あの子のお守りだといっていたサシェからはラベンダーの香りがします。ラベンダーは香りが強いので、それをたどれば探せると思います」
「ほう……?」
「ここからでも、あの子からはラベンダーの香りがします。でもチェルシーさんは手のあたりに限定して嗅いでも香りはしなかった。だからチェルシーさんは少なくとも袋は触っていないと思います」
「ふうん。そんなのわかるものなのか。じゃあ俺の匂いからわかることを教えてみろよ」