家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
「ですが、ザック様」
「チェルシーの疑いはこの令嬢が晴らせてくれる。心配するな」
ランディは、ロザリーに目を向ける。たれ目だが、顔つきがいかついので迫力がある。
「え、えっと。私はチェルシーさんが犯人だとは思っていません。ちゃんと真犯人を見つけますから」
怯えつつ答えると、ランディは途端にくしゃりと顔をゆがませ、ロザリーの両手をギュッと掴んだ。
「頼む。頼むぞ。チェルシーみたいないい子が疑われるなんてあんまりだ。俺、俺はっ」
さめざめと泣き始める。
どうやら見かけによらず、この青年はかなり人が好さそうだ。レイモンドと同じくらいの年齢の男にさめざめと泣かれて、ロザリーはどうしたらいいかわからなくなる。思わずザックに助けを求める視線を送る。
「ほら、ランディ、邪魔だ。お前は仕事をしていろ」
「ザック様ぁ。頼むよ、頼むよー。チェルシーがかわいそうだぁ」
なんだか責任が増した。しっかりやらなきゃと思うと同時に、ちゃんと見つけなかったらランディはまた泣いてしまうのではないかと気が気ではない。
前を見れば、ボビー少年が頬を膨らませている。
「僕だって嘘なんてついてない。無くなったんだ。……大事なものなのに」
疑った自分が責められていると思ったのだろう。ボビー少年が落ち込み、それを見たゲイリーがランディに腹を立てている。どちらの気持ちもわかるだけになんとも言い難い。