家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました
「座れよ。腹減ってないか。何かつくってやるよ」
レイモンドは親子をカウンターに案内するとロザリーが買ってきたばかりの野菜を取り出した。
オルコット夫人はちらりとロザリーを見て、レイモンドに尋ねる。
「見たことのない子がいるけれど、まさかあなたのお嫁さんじゃないわよね?」
「違うよ。俺はロリコンじゃないぞ。……ロザリー、こっちにおいで。紹介しよう。俺の幼馴染のオードリーとその娘のクリスだ」
「初めまして。ロザリーです」
「最近雇ったんだ。失せもの探しが得意なんだぜ? オードリーも失くしたものがあれば彼女に頼むといい」
「そうなのね。初めましてロザリーさん。オードリー=オルコットです。よろしくね」
「よろしくお願いします」
オードリーは落ち着いた物腰でロザリーに微笑みかける。
ちょこんと隣に座っていたクリスは、すぐに飽きてしまったのか足をぶらぶらとさせた。
「遊んできていい?」
「危ないから駄目よ、クリス。少しここでおとなしくしてて」
小さな少女はほほを膨らませる。大人の話なんて、小さい子には退屈なだけだ。ロザリーにも覚えがある。
遊んであげたい気もするが、ロザリーも仕事を投げ出すわけにもいかない。