【短】水に挿した花
「ねぇ?キミ…そんな所で何してるの?」
ボクの問い掛けに、ぴくりと耳を動かして。
彼女は、くるりとボクの方に顔を見せた。
「見て分からない?踊っているのよ」
その声は、鈴の鳴るような綺麗な音色で。
あぁ、本当に天使っているんだな。
そんな風にボクに思わせたんだ。
「うん。踊ってるのは、分かってる。でも…どうして?」
その問い掛けに、彼女は一瞬きょとんとした顔をした。
「どうして?…さぁ…それは私にも分からない。でも、こうして踊っていれば…きっと届くでしょう?」
誰に、何が、届くのか…。
それを問おうとして、ボクは口を噤んだ。
何故か、その瞳が切なそうに揺れている気がしたから。