【短】水に挿した花
「…貴方は、どうして此処にいるの?」
「…え?」
「ふふ…聞こえなかった?貴方のこと。聞いてるの」
踊ることを止めずに、ボクに声を掛ける彼女の息は少しも乱れることを知らないようで…。
急に、話題を振られたボクは、その声に驚いてぱちくりと瞳を動かした。
「あー…うんと…彼処にね、用事があったんだ…」
スッと指をさしたのは、オーシャンビューになるように作られた、施設だった。
「…ふうん。じゃあ、貴方は彼処から抜け出してきたの?」
その言葉に、今度はボクがきょとんとする。
そして、ボクは歯切れ悪く、苦笑いを浮かべる。
「ううん。ボクはね…今日、彼処にお別れに来たんだよ」