【短】水に挿した花
「…そう…」
深い訳も聞かずに、それだけをぽつりと呟いて、彼女は舞う。
哀しそうに少しだけ微笑んで。
「キミは……その…」
「私?私は、彼処にはいないわ」
その物言いに、なんとなく違和感を感じたけれど、そんんなことは、彼女の踊りの前ではどうでもいい気がした。
「私ね…待っているの…ずっと」
「え…?」
急な雨のように、ボクへと降り注いだ言葉。
「窓辺に、…あの部屋に、飾って貰えることを…」
「………」
そう言って、彼女がスッと指をさしたのは、あの施設の最上階にある、部屋だった。