【短】水に挿した花


「…彼処に誰か居るの?」

「えぇ…大切な人が」


今度こそ、哀しみに歪んだ声…。

彼女は、涙を堪えたような顔で、ボクに一つ微笑むと…その鈴の鳴るような声で、歌い出した。


聞き慣れない英詞だったから、ボクには全然意味なんか分からなかったけれど、その歌は、彼女の悲痛な叫びのように思えた。



「…でも…キミを窓辺に飾ってしまったら…その人は哀しむんじゃないのかな…」



ぽつり、溢れた呟き。

彼女は、何故?という視線を投げて寄越した。


「だって…傍にいられることは嬉しいかもしれないけれど…キミの自由を奪ってしまうことに繋がってしまうんだから…」



そう…彼女から自由を奪ってしまえば…。

……きっと、彼女との別れはすぐにやって来てしまうだろう。


そうなることを、「その人」は果たして願うんだろうか。

望むんだろうか…。

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