重なるてのひら ~ふれあう思い~
引っ越し蕎麦は、樹先生の奢りだって。

お祝いって言ってた。

仲が良いなぁ。

私もいつか、はぁちゃんとそんな関係になれるかな?

「先生、お隣さんへのご挨拶………夜に行ったらダメですよ。
可愛い女子高生が怖がって、引っ越しちゃいますよ!」

樹先生のかなり遠いプロポーズから立ち直ったはぁちゃんは

いつもの調子で、先生をからかってる。

「はぁちゃん、和君をからかうなんてチャレンジャーだね~
昔の奴等が見たら腰抜かすよ。」

「ねぇ!先生達の昔って、どんなだったの??
そりこみが入ってた??
夜に何台ものバイクで走るとか??
もしかして、お巡りさんに追いかけられた?」

「ノーコメントです。」

「見たい??写真があるよ。」

「樹。」

そう言うと………

期待を込めた目を向けていた私にも

「千尋。」と………

地を這う声で………普段呼ばない名前で呼んだ。

…………だって、昔の恋の話しはダメって分かったけど……

昔の先生なら良いかなぁ~って思って。

唇を尖らせても…………無視された。

「ちぃ、見ない方が良いよ。
今の声で……全て分かった気がする。」

はぁちゃんが言うなら………詮索するの止めよう。
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