独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
1.出会い
「ねえ、私、彼氏ができたの!」
残暑が厳しい九月初旬の平日。まだまだ秋の気配は感じられない。
残業中の父以外の家族が揃った夕食の時間。六人がけテーブルに姉と私が並んで座り、兄は姉の真向かいに座る。母はカウンターキッチンの中で忙しなく動いている。いつもと同じ我が家の風景。
小さな花を埋め込んだジェルネイルが施された指で、姉の都筑 紫(つづき ゆかり)が自身の頬に両手をあてながら満面の笑顔で言う。
「へー、今年に入って何人目?」
今夜のメニューであるカレーライスをお代わりしながら、兄、都筑 蒼介(つづき そうすけ)が軽く返事をする。
「三人目よ」
あっけらかんと姉が答える。
「今回は、絶対今までの人たちと違うの! 運命を感じたの! 初めての年下彼氏だし! 間違いなくこれが私の最後の恋よ!」
姉は細い腕を振り上げて、握りこぶしをつくる。
「ハイハイ。お前の運命の人は何人いるんだよ。母さん、お代わりまだ?」
胡乱な目で姉を見ながら、兄は母を急かす。
「もう、蒼。お代わりくらい自分でしてちょうだい。紫もさっさと食べなさい。橙花はサラダばっかり食べないの」
洗い物をしながら、驚くほどの観察眼でテキパキと私たちを注意する母。
「だってお母さん、せっかくの幸せな報告なのよ! ちゃんと聞いて! 彼、何回も告白してくれてたんだけど、付き合うかどうかをずっと悩んでたの」
姉が拗ねたように口をとがらせながらも、その彼氏との馴れ初めを語りだす。
透き通るような白い肌に艶のある焦げ茶色の長い髪。綺麗に手入れされた髪は完璧に巻かれている。長い睫毛に黒い瞳が印象的な目は、お人形さんのようだ。
残暑が厳しい九月初旬の平日。まだまだ秋の気配は感じられない。
残業中の父以外の家族が揃った夕食の時間。六人がけテーブルに姉と私が並んで座り、兄は姉の真向かいに座る。母はカウンターキッチンの中で忙しなく動いている。いつもと同じ我が家の風景。
小さな花を埋め込んだジェルネイルが施された指で、姉の都筑 紫(つづき ゆかり)が自身の頬に両手をあてながら満面の笑顔で言う。
「へー、今年に入って何人目?」
今夜のメニューであるカレーライスをお代わりしながら、兄、都筑 蒼介(つづき そうすけ)が軽く返事をする。
「三人目よ」
あっけらかんと姉が答える。
「今回は、絶対今までの人たちと違うの! 運命を感じたの! 初めての年下彼氏だし! 間違いなくこれが私の最後の恋よ!」
姉は細い腕を振り上げて、握りこぶしをつくる。
「ハイハイ。お前の運命の人は何人いるんだよ。母さん、お代わりまだ?」
胡乱な目で姉を見ながら、兄は母を急かす。
「もう、蒼。お代わりくらい自分でしてちょうだい。紫もさっさと食べなさい。橙花はサラダばっかり食べないの」
洗い物をしながら、驚くほどの観察眼でテキパキと私たちを注意する母。
「だってお母さん、せっかくの幸せな報告なのよ! ちゃんと聞いて! 彼、何回も告白してくれてたんだけど、付き合うかどうかをずっと悩んでたの」
姉が拗ねたように口をとがらせながらも、その彼氏との馴れ初めを語りだす。
透き通るような白い肌に艶のある焦げ茶色の長い髪。綺麗に手入れされた髪は完璧に巻かれている。長い睫毛に黒い瞳が印象的な目は、お人形さんのようだ。
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