独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
「……橙花さんに言われなくてもわかってるよ」
諦めたように大輝さんが呟く。

「俺だって兄貴が頑張っていたウェディング事業の新サービスを応援している。ひいては設楽ホールディングスの増益に繋がるチャンスなんだからな……手伝うよ。親父の許可もとる。ただし、原案を考えた橙花さんの力は借りるよ」
「大輝さん、ありがとうございます!」
思わず涙ぐんで感謝の気持ちを伝える私に、一瞬だけバツの悪そうな顔をした大輝さんは、すぐにニヤリと口角を上げた。腕を組んで私をじっと見据える。

「橙花さん、本当に兄貴が好きなんだな」
「なっ……何をっ」
狼狽える私に、彼はさらに言葉を続ける。

「今回の件で俺も兄貴に自分の力量を伝えたいし、兄貴が背負いすぎてるものを受け取れるってアピールしたいからさ。だから橙花さんはパーティーが終わったらきちんと兄貴に気持ちを伝えろよ?」
面白がるように言う彼に私の頬が真っ赤に染まる。姉を見ると、肩をすくめて笑っている。
お姉ちゃん……! 大輝さんに私の気持ちを話したわね!

「それではそろそろ始めましょうか」
冷静な柿元さんの言葉で、私たちは作業を開始した。

対外的に公表されているものだ、と言われても姉と私は部外者だ。基本的な打ち合わせは大輝さんと柿元さんが行っていた。姉と私は問題にならない範囲で柿元さんに指示されたことを遂行していく。

書類、資料の準備。業者の手配。役割分担を決め、手が空いている場合はどんどん仕事をこなしていく。その合間に姉と私は夜食もつくった。それも皆が手が空いている時に思い思いに口にする。
リビングは完全な作業場となっていた。
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