独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
だけどそんな私をこの人は劇的に変えてくれた。私が見過ごしてきたこと、誤魔化してきたことを反感をもろともせずに私に教えてくれた。そんな人はこれまでいなかった。

ならばせめてもの恩返しにこの人が困っている時は、彼が私に新たな道を示してくれたように、私もこの人の力に少しでもなりたい。

「……早く良くなって。ゆっくり休んで」
最後にそう声をかけて、私は彼の部屋を後にした。

翌日、もう一度煌生さんは医師の往診を受けた。熱は下がってきたけれどそれでもまだ平熱には戻っていない。医師は昨日と同様に安静にするようにと言い残して部屋を出ていった。

柿元さんに言われて、私は今朝から彼に付き添っている。彼は医師の診察の時は目が覚めていたけれど、疲れたのかまたすぐに瞼を閉じた。昨夜に比べると、目を覚まして起きている時間が長くなっている。

朝方、細かく刻んだ野菜が入ったコンソメスープを少し飲んでくれた。昼食時にはお粥を食べてくれた。少しずつ食欲も戻っているようでホッとした。

「今は何時? 俺はどれくらい眠っていた?」
昼食を食べた後、煌生さんが傍らで食器を片付けている私に声をかけた。

「午後一時過ぎ。昨夜柿元さんと帰宅されてからずっと眠ってましたよ。というより、熱があるんだから今は身体を休めなきゃダメ」
彼の枕元に寄り、身を屈めて話す。

「いや、パーティーの準備がある。随分楽になったから仕事をする」
言うが早いか、彼は身体を起こす。慌てて私は彼を止める。
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