独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
「何を言っているんですか! 先程お医者様も仰ってたでしょう、今は安静にしなければいけないって。まだ熱があるのに!」
「大丈夫だって!」
熱があるせいなのか普段の彼より我儘というか、聞く耳をもたない。

「絶対ダメ! とにかくおとなしくしていて!」
私はきつい声でそう言って、食器を掲げて部屋を出る。

リビングでは大輝さんと柿元さんが相変わらず顔を突き合わせて作業をしていたり、どこかに連絡をとったり、忙しなく動いている。彼らは睡眠をとったのだろうか。

ただ、ふたりともお風呂には入ったのか、昨夜とは違う服装になっている。着替えは済ませたようだ。
ちなみに私は姉と一緒に彼が与えてくれた部屋で、夜中過ぎに眠らせてもらった。姉は疲れているにもかかわらず、部屋の豪華さに歓声を上げて興奮していた。

「兄貴は?」
下げた食器を手にしている私に、大輝さんが声をかけた。

「お粥は半分以上召し上がりました。でもまだ熱が下がりきっていないのに、起きてパーティーの準備のために仕事をするって」
私が険しい表情でそう告げると、彼が苦笑した。

「さすが兄貴。じゃあ見舞いがてら説得してくる。あ、紫さんはパーティーの準備に必要なものを取りに行くって外出したよ。昼食はいらないって」
軽快な様子で立ち上がって、大輝さんが伝えてくれる。

「お願いします。じゃあ私は昼食の準備をしておきます」
ありがとう、と言って大輝さんは廊下を歩いていく。

しばらくしてリビングに戻ってきた大輝さんは煌生さんを説得した、と話してくれた。パーティーも代理で出席すること、私のことなど、昨夜皆で決めた話を報告したそうだ。煌生さんは幾つか条件をあげたものの、了承してくれたらしい。

その日もあっという間に過ぎ、とうとうパーティー当日がやって来た。

< 137 / 158 >

この作品をシェア

pagetop