独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
8.本物の婚約者
それからは大忙しだった。
私は煌生さんと大輝さんに一任された姉に連れ出され、美容院や高級ブランドのブティックに向かった。

濃い青色に近い、明るい濃紺のカットレースをあしらった膝下丈のドレスは胸の下くらいに切り替えがあり、とても上品だ。髪はわざと少しカールさせたおくれ毛を残し、複雑に編み上げてある。華奢なヒールには相変わらず慣れない。メイクはパーティー仕様、とはいえ、プロの技で華美になりすぎないように仕上げてもらっている。

まさに頭から足の先まで飾り立ててもらった私を見て、姉は満足そうに頷く。
「橙花ちゃん、綺麗よ! よく似合っているわ」
「そ、そう? 着られている感がすごいんだけど……」
自信なさげに言う私に、姉が不満そうに反論する。
「もうっ何を言っているの! ほら、背筋を伸ばして。すごく素敵だから自信をもってね」

そう言って姉は私を柿元さんが運転する車まで連れていく。柿元さんも私には勿体ない賛辞を贈ってくれて、ますます私は居たたまれなくなった。

早い時間にパーティー会場に着いた私は、柿元さんに促されてすぐに控え室に向かう。
パーティー会場は都内の有名ホテルだ。そこで仕立てのよいスーツに身を包んだ大輝さんと顔を合わせた。

髪型もきっちりと整えた彼は普段とは違う雰囲気だった。煌生さん同様、秀麗な顔立ちと恵まれた体躯の彼はとても魅力的だった。
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