独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
……体調は大丈夫なのだろうか。
彼を見ながら私が考えることはそれだけだった。

一瞬だけ彼は会場の片隅にいる私に視線を向けた。目が合うと彼はとても甘い笑顔を見せてくれた。

ドキンッ。
私の鼓動が壊れそうなくらい大きな音をたてた。

トクントクントクン。
速まっていく鼓動が私の気持ちを加速させていく。

「ハーモニーガーデンの豊かな庭園を利用した新サービスを提案いたします」
彼が新サービスの説明を続ける。それと同時に会場内の大きなスクリーンに映像が映し出される。

ハーモニーガーデンには幾つかの花壇、広々としたスペースがある。今回の新サービスはそのスペースをウェルカムボードや感謝の気持ちを表す場所として、新郎新婦が花等を使い、自由に製作するというものだ。さしずめ花の絨毯、花のメッセージ、という風に。もしくは招待客が余興がわりに事前に新郎新婦のために製作してもよいし、一部分を当日に招待客とともに製作してもよい。

また、その製作された花壇と同じ花を使用したブーケを提案することもできる。これは元々あの日、彼の自宅で私が思いつきで話したことだった。

しっかりと挨拶、説明をし終えた彼は招待客からの喝采を受けた。その姿は文句なしに立派な副社長、そのものだった。

「……うまくいったな」
大輝さんが呟く声に私は頷く。

胸が熱くなって声がでない。今、声を出したら涙が溢れそうだ。唇を噛み締めて、泣き笑いみたいな表情で私は壇上から降りる彼をひたすら見つめていた。
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