独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
『親父に結婚相手を連れてこなかったら、ウェディング事業はおろか社長就任はさせないって言われたんだ』

彼と初めて会った日。
ハーモニーガーデンの控え室で羽野チーフが出て行った後、私とソファに並んで座りながら、彼がおもむろに話し始めた。

副社長のご両親、現社長と奥様はこの世界では珍しい恋愛結婚だそうだ。というか、設楽家は基本的に恋愛結婚の家系らしい。そのせいか家庭円満で離婚率が低い。

元々このウェディング事業もそういった自身の恋愛事情もあり、社長は立ち上げに積極的だったらしい。社長と奥様の姿はそれこそ社報や経済誌くらいでしか目にしたことはない。

副社長はどちらかというと母親似だと思う。ちなみに奥様は元パリコレモデルらしい。色白の小さな顔に品のある顔立ち。まさに雲の上の存在のような一家だ。

『愛妻家っていったら聞こえはいいけど、親父は単にお袋と過ごす時間を増やしたいだけだからな。俺に面倒くさい仕事は全部押し付けてくる』
憤懣やるかたない、といった表情で彼が言う。どうやら親子関係は良好らしい。

『社長と奥様の仲睦まじさは有名ですから。ウェディング事業に新規参入した我が社としてはイメージアップで結構なことなのですが、この度社長が将来を見据えてウェディング事業を副社長に任せたいとおっしゃいまして』
なぜか私に紅茶を給仕してくれている柿元さんが、補足説明をしてくれる。

この役割分担も何かおかしい気がする。そもそも雲の上の存在である副社長と一般子会社の社員の私がなぜソファに並んで座っているのだろうか。
< 20 / 158 >

この作品をシェア

pagetop