独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
『それの何が問題なんですか?』
ふたりに問いかける私。
柿元さんが淹れてくれた紅茶はとても香りがよく気持ちが落ちつく。

副社長が社長に劣らず有能で敏腕だということは経済界では周知の事実だ。新たにウェディング事業を担当したところでそれほど困りそうにない。
有名ホテルチェーンと業務提携までこぎつけたとその有能ぶりが子会社の私の部署にさえ、噂として聞こえてきている。

『一種の腕試しをされているんです。半年以内に社長が提示した業績を上げるという条件があるんですよ。さらにウェディング事業を担うのであれば、当然結婚を前提としてお付き合いされている人を社長と奥様に紹介するという』
柿元さんが社長を見ながら、困った顔で言う。

ウェディング事業を担うために、恋人を両親に紹介しなければいけないというのはよくわからない。
それにこの人なら恋人候補に困らないだろう。

思っていたことが顔に出ていたのか、彼が憮然とした表情で言う。
『確かに俺はモテるし、女には困っていない。でも、今現在、結婚を考えて付き合っている女はいない。第一、両親に紹介するのにどうでもいい女を選べないだろ。ウェディング事業の業績アップよりこっちのほうが厄介だ』

……普通は逆だと思うけれど。
そう思ったことは、口に出さずにいる。
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