独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
『副社長の恋人、婚約者ということになりますと世間からの注目もかなり浴びることになります。もちろんウェディング事業を始めとした我が社のイメージにもつながります』
微笑みながら柿元さんが付け加える。

恋人、婚約者というだけでそれだけのプレッシャーがかけられるなんて、お金持ちの世界というのは大変だ。

『そういうわけで条件に合う女性を探しているんだ。あくまでも仮の恋人、婚約者だからな。第一に周囲に好印象を与える人物であること、第二に親父の了承を得て代理の必要がなくなった時には後腐れなく別れる分別があること。このふたつを満たすことが最低条件だ』
淡々と彼が先を続ける。恋の話というより、ただの仕事の話のようだ。

『そういうことですか』
やっと腑に落ちた。

彼が私を見て、ちょうどいいといった理由もよくわかる。私は子会社の内勤の人間なので、私の情報はたやすく人事部から手に入る。私の個人情報は恐らく筒抜けだろう。虚偽や経歴詐称がないかはすぐに確認できる。さらに私は親会社に顔を知られていない。

『アンタは見た目は地味で可愛げはないけど、冷静で落ち着きがあるし、頭の回転が速い。穂積での仕事の評判もいい。見た目は変えるとして、問題なしの合格だな』
喜んでいいのかわからない評価をくれる副社長。

この短い時間で、私の仕事の評判まで知っているなんて、どれだけ仕事が早いのか。

『地味で可愛げがなくて悪かったですね』
不機嫌な声で私が伝えると、副社長は少し焦った顔をした。

『いや、誉め言葉だぞ! さっきみたいに俺を見た途端、口説いてくるような軽い女は論外なんだ。俺はアンタが気に入った。そんな風に自分の意見を、俺に遠慮なく言ってくる女はいなかったからな』
 
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