独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
最後に連れていかれた美容院は、彼が良く利用しているところらしい。
髪型なんてろくに変えたこともなく、染めたこともない私にはこれまた未知の世界だ。
島木です、と愛想よく名乗ってくれた男性の美容師さんは、私を上から下まで一瞥して、所要時間を彼に告げた。
副社長は『楽しみにしている』とそれはそれは嬉しそうな笑顔を浮かべて去っていった。
柿元さんには『あとでお迎えに参りますね』と言われた。味方が誰もいない気がする。
親切な島木さんは無知な私でもできる、髪のアレンジの仕方や手入れの仕方を懇切丁寧に教えてくれた。そして今までなんの手入れもしてこなかったことに苦言を呈した。ただし染めたり、パーマをかけたことはおろかヘアアイロンすらしていなかった私の髪は健康的だと褒めてくれた。
閉じていた目を開けて全身鏡を覗きこんだ時、声を失った。
「なかなかいい出来でしょ」
そう言って金髪のウルフスタイルの島木さんは得意気に笑う。髪が信じられないくらいにサラサラになり、指通りも滑らかだ。
「前髪を軽く流しているけど、大きめのカーラーでふわっと巻いてもいいし。ひとつに結んでも君は顔が小さいし首が長いから似合うよ」
「え、あの、そんな」
姉ではあるまいし、そんな風に自分の容姿について褒められたことはなかったのでうろたえてしまう。火傷をしたように顔が熱い。
「俺の婚約者を口説かないでくださいよ、島木さん」
背後からふわっと肩を抱かれた。いつの間に戻ってきたのだろう。鏡に映る副社長の綺麗な目が優しく細められている。
「口説いてないよ、心外だな。女性をここに連れてくるなんて初めてじゃないか?とうとう本命を見つけたのか?」
受付カウンターに入った島木さんが、笑って彼に軽口をたたく。
髪型なんてろくに変えたこともなく、染めたこともない私にはこれまた未知の世界だ。
島木です、と愛想よく名乗ってくれた男性の美容師さんは、私を上から下まで一瞥して、所要時間を彼に告げた。
副社長は『楽しみにしている』とそれはそれは嬉しそうな笑顔を浮かべて去っていった。
柿元さんには『あとでお迎えに参りますね』と言われた。味方が誰もいない気がする。
親切な島木さんは無知な私でもできる、髪のアレンジの仕方や手入れの仕方を懇切丁寧に教えてくれた。そして今までなんの手入れもしてこなかったことに苦言を呈した。ただし染めたり、パーマをかけたことはおろかヘアアイロンすらしていなかった私の髪は健康的だと褒めてくれた。
閉じていた目を開けて全身鏡を覗きこんだ時、声を失った。
「なかなかいい出来でしょ」
そう言って金髪のウルフスタイルの島木さんは得意気に笑う。髪が信じられないくらいにサラサラになり、指通りも滑らかだ。
「前髪を軽く流しているけど、大きめのカーラーでふわっと巻いてもいいし。ひとつに結んでも君は顔が小さいし首が長いから似合うよ」
「え、あの、そんな」
姉ではあるまいし、そんな風に自分の容姿について褒められたことはなかったのでうろたえてしまう。火傷をしたように顔が熱い。
「俺の婚約者を口説かないでくださいよ、島木さん」
背後からふわっと肩を抱かれた。いつの間に戻ってきたのだろう。鏡に映る副社長の綺麗な目が優しく細められている。
「口説いてないよ、心外だな。女性をここに連れてくるなんて初めてじゃないか?とうとう本命を見つけたのか?」
受付カウンターに入った島木さんが、笑って彼に軽口をたたく。