独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
キャアキャアと悲鳴にも似た声や甲高い声、様々な声が入り乱れる。ギュッと唇を噛みしめた時、ふわっと右の耳元を柔らかいものが掠めた。
……何?
キャーッと耳をつんざくような悲鳴が遠くで聞こえた。反射的に感触のあった耳を押さえて顔を上げると、イタズラッ子のような表情の副社長が頰がくっつきそうなくらい近い距離から私を見下ろしていた。
「緊張しすぎ。大丈夫だから」
耳元で囁く彼の声はカッと私の身体を火照らせる。
まさか、まさか、今の感触って!
「い、今……」
声にならない声で彼に問うと、自身の唇に人差し指を当てた彼が妖艶に微笑む。
「内緒。橙花がガチガチになりすぎなのが悪い」
「何が内緒、ですか!!」
演技ということを忘れて真っ赤な顔で叫ぶと、彼はクスクスと形の良い唇をほころばせて笑う。
「そのほうが橙花らしい」
そう言って何事もなかったように私の手をひいて、歩きだす。だけどその歩みは驚くほどゆっくりだ。普段はもっと早足なのに、と不思議に思う。
皆に見せつけるためなの?
衆人環視の地獄のような入り口から少し離れて、役員以上のフロアに向かう専用エレベーターホールに向かう。さすがにここまでくると人影はなく、ほっとする。
……何?
キャーッと耳をつんざくような悲鳴が遠くで聞こえた。反射的に感触のあった耳を押さえて顔を上げると、イタズラッ子のような表情の副社長が頰がくっつきそうなくらい近い距離から私を見下ろしていた。
「緊張しすぎ。大丈夫だから」
耳元で囁く彼の声はカッと私の身体を火照らせる。
まさか、まさか、今の感触って!
「い、今……」
声にならない声で彼に問うと、自身の唇に人差し指を当てた彼が妖艶に微笑む。
「内緒。橙花がガチガチになりすぎなのが悪い」
「何が内緒、ですか!!」
演技ということを忘れて真っ赤な顔で叫ぶと、彼はクスクスと形の良い唇をほころばせて笑う。
「そのほうが橙花らしい」
そう言って何事もなかったように私の手をひいて、歩きだす。だけどその歩みは驚くほどゆっくりだ。普段はもっと早足なのに、と不思議に思う。
皆に見せつけるためなの?
衆人環視の地獄のような入り口から少し離れて、役員以上のフロアに向かう専用エレベーターホールに向かう。さすがにここまでくると人影はなく、ほっとする。