独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
役員フロアはふかふかの絨毯が敷き詰められていて、頭上には照明が輝いている。
ほかのフロアとは明らかに違う、ぴりっと引き締まった雰囲気が漂っていた。
そこを余裕綽々の様子で闊歩している彼は、やはり私とは住む世界が違う人なのだと思い知らされる。その事実が私を少し寂しくさせた。
こんなに近くにいても、この人と私の間には大きな距離がある。私はただの一般女子社員でしかない。
「橙花、機嫌なおせよ?」
足を止めて、私の顔を彼が覗きこむ。紅茶色の瞳は優しく細められている。
どうしてこの人はこんなに私に構うのだろう。契約で婚約者役をお互いに演じているにすぎないのに、それ以上のことを当たり前のようにしてくる。これが恋愛の真似事なのだろうか。
「なおってます! 私はそんなことで怒ったりはしません!」
「へえ? じゃあ今度は唇にする」
揶揄するように話す彼はとても楽しそうだ。ふかふかの絨毯は、痛む私の足をやわらかく受け止めてくれる。
「ば、馬鹿な冗談を言わないでください!」
むきになって反論する私に、彼は至極楽しそうに笑う。
「まさかキスもしたことない?」
グッと言葉に詰まる。
なんでそんなことをいきなりこんな場所で言われなきゃいけないの! 個人情報なのに!
憤慨して睨みつける私をもろともせず、彼は片眉を上げて綺麗な目を眇める。
「図星だな。アンタにキスするのが楽しみだ。橙花のファーストキスをもらえるなんて光栄だ」
とんでもないことを、魅惑的な笑顔でいう彼。
ほかのフロアとは明らかに違う、ぴりっと引き締まった雰囲気が漂っていた。
そこを余裕綽々の様子で闊歩している彼は、やはり私とは住む世界が違う人なのだと思い知らされる。その事実が私を少し寂しくさせた。
こんなに近くにいても、この人と私の間には大きな距離がある。私はただの一般女子社員でしかない。
「橙花、機嫌なおせよ?」
足を止めて、私の顔を彼が覗きこむ。紅茶色の瞳は優しく細められている。
どうしてこの人はこんなに私に構うのだろう。契約で婚約者役をお互いに演じているにすぎないのに、それ以上のことを当たり前のようにしてくる。これが恋愛の真似事なのだろうか。
「なおってます! 私はそんなことで怒ったりはしません!」
「へえ? じゃあ今度は唇にする」
揶揄するように話す彼はとても楽しそうだ。ふかふかの絨毯は、痛む私の足をやわらかく受け止めてくれる。
「ば、馬鹿な冗談を言わないでください!」
むきになって反論する私に、彼は至極楽しそうに笑う。
「まさかキスもしたことない?」
グッと言葉に詰まる。
なんでそんなことをいきなりこんな場所で言われなきゃいけないの! 個人情報なのに!
憤慨して睨みつける私をもろともせず、彼は片眉を上げて綺麗な目を眇める。
「図星だな。アンタにキスするのが楽しみだ。橙花のファーストキスをもらえるなんて光栄だ」
とんでもないことを、魅惑的な笑顔でいう彼。