独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
「な、何を言ってるんですか⁉ しません、させません、絶対に!」
全力で否定する私の耳元に彼がそっと囁く。低い声が耳朶を震わせる。
「いいことを教えてやる。恋愛に『絶対』はないんだよ。明日俺に本気で恋をしているかもしれないぞ?」
「ふざ……」
ふざけるのも大概にしてください、と啖呵を切ろうとした私の声を明るい男性の声が背後から遮った。
「へえ、珍しい。兄貴が会社で笑うなんて」
「大輝、出張じゃなかったのか?」
振り向いた副社長が驚きもせず、綺麗な眉をひそめて呟いた。漆黒の髪に焦げ茶色の瞳のこれまた端正な顔立ちの男性が柔和に微笑む。彼は私を凝視して口を開く。
「さっき帰社したんだ。それよりこの可愛らしい女性を紹介してくれる?」
私が返事をしようとした途端、やれやれといった表情を浮かべて副社長が簡潔に答える。
「婚約者の都筑橙花だ」
「婚約者? いつの間に婚約したわけ? 俺、聞いてないんだけど」
切れ長の目を大きく見開いて、漆黒の髪の彼が言う。
「正式にはまだ婚約していない。親父にはこれから紹介する。ただ俺がそのつもりというだけだ」
面倒くさそうに副社長が返答する。
「へえ、それは興味深い。まさか兄貴がこんなに可愛い人を隠していたなんてね。残念だけど、さっき連絡があって親父は今日、帰社しないことになったよ。はじめまして、橙花さん。弟の大輝です」
端正な顔を綻ばせて、彼が手を差し出す。
「は、はじめまして。都筑橙花と申します。本日は突然会社に参りまして申し訳ございません」
差し出された手をそっと握り返す。大きな手は副社長とあまり変わらない。
全力で否定する私の耳元に彼がそっと囁く。低い声が耳朶を震わせる。
「いいことを教えてやる。恋愛に『絶対』はないんだよ。明日俺に本気で恋をしているかもしれないぞ?」
「ふざ……」
ふざけるのも大概にしてください、と啖呵を切ろうとした私の声を明るい男性の声が背後から遮った。
「へえ、珍しい。兄貴が会社で笑うなんて」
「大輝、出張じゃなかったのか?」
振り向いた副社長が驚きもせず、綺麗な眉をひそめて呟いた。漆黒の髪に焦げ茶色の瞳のこれまた端正な顔立ちの男性が柔和に微笑む。彼は私を凝視して口を開く。
「さっき帰社したんだ。それよりこの可愛らしい女性を紹介してくれる?」
私が返事をしようとした途端、やれやれといった表情を浮かべて副社長が簡潔に答える。
「婚約者の都筑橙花だ」
「婚約者? いつの間に婚約したわけ? 俺、聞いてないんだけど」
切れ長の目を大きく見開いて、漆黒の髪の彼が言う。
「正式にはまだ婚約していない。親父にはこれから紹介する。ただ俺がそのつもりというだけだ」
面倒くさそうに副社長が返答する。
「へえ、それは興味深い。まさか兄貴がこんなに可愛い人を隠していたなんてね。残念だけど、さっき連絡があって親父は今日、帰社しないことになったよ。はじめまして、橙花さん。弟の大輝です」
端正な顔を綻ばせて、彼が手を差し出す。
「は、はじめまして。都筑橙花と申します。本日は突然会社に参りまして申し訳ございません」
差し出された手をそっと握り返す。大きな手は副社長とあまり変わらない。