独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
私はふたりの長身の男性に挟まれながら目を泳がす。
ふたりとも見惚れてしまうくらいに綺麗な顔立ちをしている。副社長は甘めの王子様のような顔立ちだけど、弟は涼やかな顔立ちの貴公子といった感じだ。

「……もういいだろ」

眼前の弟を睨みつけながら、副社長が彼の手から私の手を引き離す。トン、と背中が彼の胸に当たる。

「そんな兄貴の顔、初めて見たんだけど。心配しなくても兄貴の婚約者に手なんて出さないよ。それに俺には愛する彼女がいるって報告したばかりだろ?」
クックッと笑いながら大輝さんが言うと、彼は不機嫌そうに答える。

「別に心配なんてしていない。橙花、行くぞ。大輝、お前には後で話がある」
はいはい、と大輝さんは手を振って、私たちを見送ってくれた。

「あ、あの、いいんですか?」
そう尋ねると彼は無言で眼前の部屋の扉を開けた。重厚な木製の大きな扉はとても存在感がある。バタン、と派手な音を立てて扉が閉まった途端、彼に抱きすくめられた。

「ふ、副社長!」
いきなりのことに驚いてもがく私。彼がはーっと大きな息を吐いた。私の顔を覗きこむ。

「あいつには近づくな。大輝は昔から女には手が早い」
そんな心配は不要だ、と言いかけた言葉を思わず呑み込む。彼の薄茶色の瞳があまりにも真剣な色を帯びていたから。
ドキン、と一際大きく鼓動が跳ねた。

「……橙花、返事は?」
私を胸に閉じ込めたまま、彼は切なげに問いかける。

どうしてそんな顔をするの。どうしてそんなことを心配するの。

こくんと私が頷くと安堵したように彼が微笑む。その微笑みになぜか嬉しくなる。
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