独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
鋭い声で彼を拒否する。彼の顔を直視できない。
できるならここから逃げ出したい。どうしてこんなことになっているのか理解ができない。
代理婚約者、恋愛の真似事にしてはやり過ぎだ。ここでうずくまってこの人を思い切りなじりたい。自分がどうしたらいいかわからない。こんな感情は初めてだ。自分で自分の気持ちを完全にもてあましている。
完全拒否の私の様子に彼は小さく呟く。
「橙花にキスがしたかった。初めてのキスを俺のものにしたかった。だから謝らない」
直球すぎる答え。意味がわからない。交換条件とは関係なくキスをするなんて。
彼はとても険しい表情をしている。その理由さえもわからない。その表情をするのは私のはずだ。
私は両脇で握りしめた拳に力を入れて、無言で副社長室を飛び出した。急いでエレベーターの呼び出しボタンを押す。涙がこみあげてきて慌てて首を振る。あんな自分勝手な男のために泣かない。泣くなんてありえない。
どうしてキスするの? どうしてそんなことをするの? 本物の恋人でもないのに、あんなにも甘い声で囁くなんておかしい。
やってきたエレベーターに飛び乗って、会社を出るまでずっとそのことを自分に問い続けた。
もう代理婚約者だとか契約だとかは考えられなくなっていた。恋愛の真似事、そんなものも関係ない。彼のことは考えたくない。
飛び出した大通りでタクシーを捕まえて、唇を硬く結んだまま家路についた。バッグの中で何度も鳴り続けるスマートフォンの振動には気づかない振りをした。
できるならここから逃げ出したい。どうしてこんなことになっているのか理解ができない。
代理婚約者、恋愛の真似事にしてはやり過ぎだ。ここでうずくまってこの人を思い切りなじりたい。自分がどうしたらいいかわからない。こんな感情は初めてだ。自分で自分の気持ちを完全にもてあましている。
完全拒否の私の様子に彼は小さく呟く。
「橙花にキスがしたかった。初めてのキスを俺のものにしたかった。だから謝らない」
直球すぎる答え。意味がわからない。交換条件とは関係なくキスをするなんて。
彼はとても険しい表情をしている。その理由さえもわからない。その表情をするのは私のはずだ。
私は両脇で握りしめた拳に力を入れて、無言で副社長室を飛び出した。急いでエレベーターの呼び出しボタンを押す。涙がこみあげてきて慌てて首を振る。あんな自分勝手な男のために泣かない。泣くなんてありえない。
どうしてキスするの? どうしてそんなことをするの? 本物の恋人でもないのに、あんなにも甘い声で囁くなんておかしい。
やってきたエレベーターに飛び乗って、会社を出るまでずっとそのことを自分に問い続けた。
もう代理婚約者だとか契約だとかは考えられなくなっていた。恋愛の真似事、そんなものも関係ない。彼のことは考えたくない。
飛び出した大通りでタクシーを捕まえて、唇を硬く結んだまま家路についた。バッグの中で何度も鳴り続けるスマートフォンの振動には気づかない振りをした。