独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
「そのことは謝らないって言った。でも今度からは許可を取ってからにする」
私のうなじから指を外して、彼がポンと私の頭を撫でた。

「許可⁉ 許可なんてしませんよ!」
思わずむきになって言い返す私に、彼はクスクスと楽しそうに笑う。

「はいはい、いつまでそこにいるつもり? 入れよ」
そう言って彼は玄関ドアを大きく開ける。真っ白な大理石が敷きつめられた玄関が目に入る。

「だから、話をきちんと聞いてください! お、お邪魔します……」
豪奢な内装に気後れしながらも挨拶をして靴を脱ぎ、彼について長い廊下を歩く。

そもそもなんで私はここに呼ばれたんだろう。辿り着いた場所は三十畳はあろうかという広さのリビング。高い天井にこれまた一面のガラスウォールからの眺望は見事のひと言に尽きる。

「あの、どうして今日」
私が口を開いた途端、彼が突然振り返って私を抱きしめた。

「な、何⁉」
ドサッと肩からかけていた小ぶりのショルダーバッグがフローリングの床に落ちる。いきなりのことにもがく私に彼が私の左肩口に顔をうずめたまま、聞いたことのない低い声を出す。

「橙花、さっきまで誰といた?」
「あ、姉とです」
嘘じゃない、さっきまで一緒にいたのは姉だ。

「ここまで誰と来たかってことだけど?」
求めていた答えとは違ったようで、さらに彼の声の凄味が増す。この人と関わりの浅い私でもわかる。これはかなり不機嫌になっている。

「だ、大輝さんの車で姉と三人で……」
正直に答える。
大輝さんが柿元さんに伝えるって言ってたはずなのに、この人には伝わっていないの?
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