独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
どうして私は抵抗しないの? また勝手にキスされたのに。あんな一方的で強引なキスをされたのに、どうして私は嫌じゃないの?
私を抱きしめる腕は相変わらず力強くてとても温かい。男性の胸がこんなに落ち着くものだなんて数日前では知らなかった。こんなにも胸が締めつけられるこの気持ちはなんだろう。父とも兄とも家族とも違う男性の温もりが私を包む。
「勝手に決めないで」
そう言いながらも抵抗しない私を、彼はきっと見抜いてる。その証拠に彼はクスクス笑っている。その余裕が悔しい。
「私は婚約者になるってまだ決めてない!」
髪をそっと撫でられながら、必死で言い返す。どうしてこの人の手はこんなにも優しく私に触れるのだろう。
眼前にある彼の白いシャツを悔し紛れに握る。くしゃりとできた皺は、まるで今の私の心境のよう。答えが出ず、流されてばかりの無様な私。くしゃくしゃになって、最後にこの人が飽きた頃には放り出されるのだろうか。
「橙花の決心がつくまでは待ってやる。一カ月くらいは」
とんでもないことを当たり前のように言う。
「一カ月⁉」
婚約者になるかどうかを決めるのに、たった一カ月⁉
「長すぎるくらいだろ? もちろんその間も代理婚約の仕事はきっちりしてもらうからそのつもりでいろよ。ああ、でもしばらくは親父に会う必要はないよ」
「横暴! 考える時間がないじゃない!」
思わず顔を上げて叫ぶ私に、彼は口角を上げて応酬する。
「考えるものなのか?」
「あなたが答えは自分で考えろって言ったんでしょ!」
私を抱きしめる腕は相変わらず力強くてとても温かい。男性の胸がこんなに落ち着くものだなんて数日前では知らなかった。こんなにも胸が締めつけられるこの気持ちはなんだろう。父とも兄とも家族とも違う男性の温もりが私を包む。
「勝手に決めないで」
そう言いながらも抵抗しない私を、彼はきっと見抜いてる。その証拠に彼はクスクス笑っている。その余裕が悔しい。
「私は婚約者になるってまだ決めてない!」
髪をそっと撫でられながら、必死で言い返す。どうしてこの人の手はこんなにも優しく私に触れるのだろう。
眼前にある彼の白いシャツを悔し紛れに握る。くしゃりとできた皺は、まるで今の私の心境のよう。答えが出ず、流されてばかりの無様な私。くしゃくしゃになって、最後にこの人が飽きた頃には放り出されるのだろうか。
「橙花の決心がつくまでは待ってやる。一カ月くらいは」
とんでもないことを当たり前のように言う。
「一カ月⁉」
婚約者になるかどうかを決めるのに、たった一カ月⁉
「長すぎるくらいだろ? もちろんその間も代理婚約の仕事はきっちりしてもらうからそのつもりでいろよ。ああ、でもしばらくは親父に会う必要はないよ」
「横暴! 考える時間がないじゃない!」
思わず顔を上げて叫ぶ私に、彼は口角を上げて応酬する。
「考えるものなのか?」
「あなたが答えは自分で考えろって言ったんでしょ!」