独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
その後、彼の行きつけと思われる料亭に連れて行かれた。
どこかの有名店のフルコースとか格式が高い場所だったらどうしよう、と不安になる私の心境を見抜いていたのか、そこは温かな雰囲気の店だった。
都会の中にひっそりと佇む落ち着いた門構え。細い石畳と竹林を抜けた先にあるえんじ色の暖簾が目立つ。迎えてくれた着物姿が美しい女将さんは、私の姉よりいくつか年上に見えた。
「まあ、いらっしゃい。今日は随分可愛らしい方と一緒なのね」
「婚約者なんだ」
彼が当たり前のようにそう紹介する。
その言葉に驚いて、隣に立つ彼を見上げた。すると泣きたくなるほど優しい瞳が私を見下ろしていた。瞬時に身体が熱くなる。
「あ、ありがとうございます。初めまして! 都筑橙花と申します」
彼の態度に、女将さんへの反応が遅れてしまう。慌てて頭を下げる私に、女将さんが艶やかに微笑む。
「本当に可愛らしいお嬢さん。女将の増井(ますい)と申します。ご婚約おめでとうございます」
彼は嬉しそうに私を見つめる。どうしてこんなふうに私を紹介してくれるのだろう。これも私が代理婚約者だから?
悩む私をよそに、女将さんは私たちを和室の個室に案内してくれた。足の裏に触れる畳の感触が気持ちいい。
彼が注文してくれたのはコース料理のようだった。前菜は野菜のゼリー寄せから始まり、椀物、旬の造りに煮物、と順に繰り出されていく料理は見た目もとても美しい。すべて優しい味付けで、とてもおいしかった。
こんなに畏まった席に慣れない私を、彼は馬鹿にするでもなく、ゆっくりと食事をしてくれていた。何気ない話題を振ってくれたり、食事の雰囲気はとても明るかった。
そして何よりも彼の箸遣いはとても美しかった。
どこかの有名店のフルコースとか格式が高い場所だったらどうしよう、と不安になる私の心境を見抜いていたのか、そこは温かな雰囲気の店だった。
都会の中にひっそりと佇む落ち着いた門構え。細い石畳と竹林を抜けた先にあるえんじ色の暖簾が目立つ。迎えてくれた着物姿が美しい女将さんは、私の姉よりいくつか年上に見えた。
「まあ、いらっしゃい。今日は随分可愛らしい方と一緒なのね」
「婚約者なんだ」
彼が当たり前のようにそう紹介する。
その言葉に驚いて、隣に立つ彼を見上げた。すると泣きたくなるほど優しい瞳が私を見下ろしていた。瞬時に身体が熱くなる。
「あ、ありがとうございます。初めまして! 都筑橙花と申します」
彼の態度に、女将さんへの反応が遅れてしまう。慌てて頭を下げる私に、女将さんが艶やかに微笑む。
「本当に可愛らしいお嬢さん。女将の増井(ますい)と申します。ご婚約おめでとうございます」
彼は嬉しそうに私を見つめる。どうしてこんなふうに私を紹介してくれるのだろう。これも私が代理婚約者だから?
悩む私をよそに、女将さんは私たちを和室の個室に案内してくれた。足の裏に触れる畳の感触が気持ちいい。
彼が注文してくれたのはコース料理のようだった。前菜は野菜のゼリー寄せから始まり、椀物、旬の造りに煮物、と順に繰り出されていく料理は見た目もとても美しい。すべて優しい味付けで、とてもおいしかった。
こんなに畏まった席に慣れない私を、彼は馬鹿にするでもなく、ゆっくりと食事をしてくれていた。何気ない話題を振ってくれたり、食事の雰囲気はとても明るかった。
そして何よりも彼の箸遣いはとても美しかった。