独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
リビングにいた母に帰宅の挨拶をして、二階にある自室に向かう。階段を上り、自室のドアを開けようとした途端、二階の廊下にいた姉に声をかけられた。

「おかえりなさい。橙花ちゃん」
「お姉ちゃん、帰ってたの?」
大輝さんと一緒だったから帰りはもっと遅いと思っていた。私がそう言うと姉はイタズラッ子のように目を輝かせた。

「橙花ちゃんの話を聞きたくて、待っていたのよ。安心して、蒼は今日友達のところに泊まるらしいから」
なぜかウキウキした様子の姉に小さく嘆息し、私は自室に入った。続いて姉が部屋に入ってきて、私のベッドに腰かける。ギシリとベッドのスプリングが軋んだ。

「髪型、服装、褒めてもらえた?」
姉が明るく言う。ベッドのすぐ左横にある書き物机の上にバッグを無造作に置いて、小さく頷く私。

「そう、よかったわね! やっぱり私が思ったとおりね」
胡乱な瞳を向ける私に、姉は口角を上げて微笑む。

「で、何をそんなに悩んでるの?」
私はその問いかけに瞠目する。姉は優雅に足を組んだ。パステルピンクの部屋着がとてもよく似合っている。

「何年橙花ちゃんの姉をやってると思ってるの?」
私は机の前の椅子に腰かける。
観念した私は姉にぼそぼそと今日の出来事を伝えた。姉は茶々をいれることもせず、真剣に話を聞いてくれた。
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