独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
即座に言い返す私に姉がしてやったりというかのように、口角を上げる。

「好き、の第一歩はどれだけその人のことを考えるかじゃない? 私には橙花ちゃんが副社長に恋をしているように見えるけど?」
「まさか!」

そんなわけない。そんなことがあるはずがない。このイラ立ったり不安になったり、胸が締めつけられそうになる感情がそんなものであるわけがない。

「さあ、どうかしら? 決めつけるのはまだ早いし、その答えは橙花ちゃんにしかわからないんだから」
楽しそうに言って姉はベッドから立ち上がった。

「答えを教えてくれるんじゃないの!?」
つられて立ち上がった私に、姉は可愛らしく小首を傾げる。

「答えは橙花ちゃんのなかにあるわ。大丈夫、きっと自然にわかるから。でも嬉しいわ、橙花ちゃんとこんな話ができるようになるなんて。ねえ、橙花ちゃん、自分以外の誰かを泣きたくなるくらい特別に想えるって本当に素敵なことよ」
花のように綺麗に笑って、姉は私の部屋を出て行った。

姉の言葉だけがいつまでも私の心に残っていた。
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