独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
休みが明けて、月曜日がやってきた。

いつもと同じ時間に起床し、出勤準備を整える。
今日からは姉のアドバイスに従ってみようと思った。変な意地を張って、視野を縮めてしまうことからはもう卒業したい。

今は少しずつでもいいから、違う自分になりたい。綺麗になりたい。服装は姉に相談して煌生さんが買ってくれたものの中から選んだ。コンパクトな白のリブニットとベリーカラーのラップスカート。

いつもと同じ時間、同じ通勤路。変わらない毎日のはずなのに、いつもと違って何かソワソワしてしまうのはなぜだろう。

朝、バッグの中身を入れ替えている時に、彼に渡された合鍵を見つけてしまったから? それを自宅に置きっぱなしにすることがためらわれて、こっそりバッグの奥底に忍ばせているから? 朝一番にスマートフォンに彼からのメッセージが届いていたから?

人でごった返す最寄り駅のホームで彼からのメッセージに目を通す。どうしてだろう。何も動揺する理由なんてないのに、鼓動がうるさいほど暴れだす。

【今度取材を受ける。大事な婚約者についてコメントしてくる】

素っ気ないメッセージ。しかも内容がよくわからない。なのに頰が緩んでしまう。
短いメッセージは既に頭の中に入っているのに、何回も読み返してしまう。下を向いて思わず周囲を見回す。

仕事があるのに朝からこんな調子ではだめだ。気を引き締めて、スマートフォンをバッグにしまった。
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