独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
「だからなんで合鍵を使わないんだ?」
玄関ドアを開けてくれた煌生さんが、呆れたように開口一番そう言った。
今日の私の装いはカーキ色のVネックリブカーディガンに紺色の長めのランダムプリーツスカート。これまた彼が私に買い揃えてくれた服から選んだコーディネートだ。
「ええっと、恐れ多いというかなんというか……」
しどろもどろになって返事をする私。
だってこんなに豪華なマンション、足を踏み入れることすら慣れないし、緊張する。とてもじゃないけど、我が物顔で歩けない。
「橙花は俺の大事な婚約者なんだから、堂々としてろ」
クシャッと私の髪をひと撫でして、彼が言う。その感触に心がざわめく。
『婚約者』
その言葉が嬉しいのに、何だか寂しく感じてしまうのはどうしてだろう?
リビングへと移動しながら言い返す。
「……代理婚約者です」
小さな声で反論する私に、彼が紅茶色の瞳を眇める。
「往生際が悪いな」
「……事実です」
拗ねたように言う私。こんな言い方をしたいわけじゃない。
「橙花だけがそう言い張ってるけどな。その服、似合ってる。やっぱり橙花は華奢だな、そのカーディガンを着るとよくわかる。メイクも髪型も可愛い」
私の言葉を聞き流すように、彼はさらりと話題を変える。
その言葉に私の心がかき乱される。綺麗になりたいと遅まきながら思うようになって、その努力を彼が認めてくれたようで胸に小さな灯りが灯ったように温かくなる。
玄関ドアを開けてくれた煌生さんが、呆れたように開口一番そう言った。
今日の私の装いはカーキ色のVネックリブカーディガンに紺色の長めのランダムプリーツスカート。これまた彼が私に買い揃えてくれた服から選んだコーディネートだ。
「ええっと、恐れ多いというかなんというか……」
しどろもどろになって返事をする私。
だってこんなに豪華なマンション、足を踏み入れることすら慣れないし、緊張する。とてもじゃないけど、我が物顔で歩けない。
「橙花は俺の大事な婚約者なんだから、堂々としてろ」
クシャッと私の髪をひと撫でして、彼が言う。その感触に心がざわめく。
『婚約者』
その言葉が嬉しいのに、何だか寂しく感じてしまうのはどうしてだろう?
リビングへと移動しながら言い返す。
「……代理婚約者です」
小さな声で反論する私に、彼が紅茶色の瞳を眇める。
「往生際が悪いな」
「……事実です」
拗ねたように言う私。こんな言い方をしたいわけじゃない。
「橙花だけがそう言い張ってるけどな。その服、似合ってる。やっぱり橙花は華奢だな、そのカーディガンを着るとよくわかる。メイクも髪型も可愛い」
私の言葉を聞き流すように、彼はさらりと話題を変える。
その言葉に私の心がかき乱される。綺麗になりたいと遅まきながら思うようになって、その努力を彼が認めてくれたようで胸に小さな灯りが灯ったように温かくなる。