独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
ゲストハウスに到着し、ちょうど入り口近くに待機していた長身の羽野チーフに挨拶をする。
ベリーショートの髪に、制服になっている黒のパンツスーツを颯爽と着こなす彼女は、以前の仕事の際に私の指導をしてくれた敏腕チーフだ。
彼女は設楽ホールディングス副社長直々の推薦で異動してきたと人づてに聞いた。
「都筑さん! 急にごめんなさいね。助かるわ。こんな日に限って特別プランのお客様がいらっしゃるのよ。どうしても手が足りなくて」
心底申し訳なさそうに彼女が言う。
いつも快活なチーフの顔に、少しだけ疲労の色が滲んでいる。よほど忙しいのか、今回の出来事に困っているのだろう。並んで事務所まで歩く。
「いえ、お気になさらないでください。それより私の仕事を教えていただけますか。お役に立てるといいのですが」
黒縁眼鏡のブリッジを押し上げて話す私にチーフが苦笑する。
私とあまり年齢の変わらなそうな彼女はとても綺麗な人だ。事務所の扉を開けて、チーフが私を中へ促す。
「相変わらず頼もしいわね。それじゃお言葉に甘えさせてもらうわ。制服はこれを使って。ロッカーの鍵はこれね。着替えが済んだら事務所に戻って声をかけてくれる? 仕事の説明をするわ」
そう言ってクリーニング済みの制服を渡される。
私は頷いて更衣室へ向かう。
場所は以前手伝った時に館内をくまなく走り回ったのでよく記憶している。迷うことなく更衣室に辿り着き、ロッカーの番号を確認し、荷物を収納してから着替える。
肩までの髪を頭の低い位置でひとつに結ぶ。いつも念のために持ち歩いている、使い捨てコンタクトレンズにしたほうが良いか思案したけれど、今日の業務には問題ないだろうと、そのまま眼鏡にする。
備え付けの鏡で身だしなみを確認する。先程、オフィスビルのガラスに映った姿とあまり変わらない地味な装い。その姿を同じように一瞥して更衣室を出た。
ベリーショートの髪に、制服になっている黒のパンツスーツを颯爽と着こなす彼女は、以前の仕事の際に私の指導をしてくれた敏腕チーフだ。
彼女は設楽ホールディングス副社長直々の推薦で異動してきたと人づてに聞いた。
「都筑さん! 急にごめんなさいね。助かるわ。こんな日に限って特別プランのお客様がいらっしゃるのよ。どうしても手が足りなくて」
心底申し訳なさそうに彼女が言う。
いつも快活なチーフの顔に、少しだけ疲労の色が滲んでいる。よほど忙しいのか、今回の出来事に困っているのだろう。並んで事務所まで歩く。
「いえ、お気になさらないでください。それより私の仕事を教えていただけますか。お役に立てるといいのですが」
黒縁眼鏡のブリッジを押し上げて話す私にチーフが苦笑する。
私とあまり年齢の変わらなそうな彼女はとても綺麗な人だ。事務所の扉を開けて、チーフが私を中へ促す。
「相変わらず頼もしいわね。それじゃお言葉に甘えさせてもらうわ。制服はこれを使って。ロッカーの鍵はこれね。着替えが済んだら事務所に戻って声をかけてくれる? 仕事の説明をするわ」
そう言ってクリーニング済みの制服を渡される。
私は頷いて更衣室へ向かう。
場所は以前手伝った時に館内をくまなく走り回ったのでよく記憶している。迷うことなく更衣室に辿り着き、ロッカーの番号を確認し、荷物を収納してから着替える。
肩までの髪を頭の低い位置でひとつに結ぶ。いつも念のために持ち歩いている、使い捨てコンタクトレンズにしたほうが良いか思案したけれど、今日の業務には問題ないだろうと、そのまま眼鏡にする。
備え付けの鏡で身だしなみを確認する。先程、オフィスビルのガラスに映った姿とあまり変わらない地味な装い。その姿を同じように一瞥して更衣室を出た。