独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
その時、ソファの前にあるセンターテーブルの上に重ねられた書類に気がついた。

「お仕事をされてたんですか?」
書類に視線を向けながら彼に尋ねる。

「ああ、ウェディング事業のな」
ゆったりした足取りで彼がキッチンに向かう。

「やっぱり、忙しいんですね」
小さく呟いた私の声が彼に届いたかどうかはわからない。ただ前回と同様に紅茶の用意をして、キッチンから出てきた彼は何も気にしていないようだ。

「ソファに座らないのか?」
怪訝そうに彼が言う。

「私が目にしたらダメな書類ではありませんか?」
「ああ、そういうことか。さすが橙花だな。極秘事項ではなく、一般公開されている資料だから気にしなくていい」
そう言って彼は優しく目を眇める。
その返事を聞いて、私はおずおずとソファに腰をおろした。

「ウェディング事業で何か問題でもあったんですか?」
「いや、ハーモニーガーデンの二号店をオープンさせるんだ」
躊躇うことなく彼が答える。

そう言えば、社内ニュースにそんなことが記載されていた。そのオープンを祝うパーティーがハーモニーガーデンで近々開かれるということも。
ウェディング事業はなかなかの業績をあげているらしい。社長の出した条件を彼ならきっと達成できるだろう。確かプレス発表は既に済ませているはずだ。

「そこで既存のハーモニーガーデンの業績を更に上げるためと新店舗のために新しいサービスを検討しているんだ。改善点でもいい、とにかく利用してくださる方に印象付けられるものをな。今度のパーティーで内容を発表することになっている」
資料の山をテーブルの隅に寄せながら、彼が言う。
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